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柔軟性を低下させない筋トレの方法とは

バーベルアームカールをしている男性

「筋トレをすると身体の柔軟性が下がる」と思っている人はいませんか?

しかし、適切な方法で行っていればそうなることはないため、「筋トレをすると身体の柔軟性が下がる」と思っている方は、筋トレの方法が不適切な可能性があります。

そこで今回は、筋トレしても身体の柔軟性が下がらないための適切な方法をご紹介したいと思います。

目次

柔軟性とは(定義)

前後開脚している体操選手

その前にまずは「柔軟性」とは何なのかについてみていきたいと思います。

スポーツやトレーニングにおいては「柔軟性」という言葉がよく出てきます。それだけ重要な要素だということにもなりますが、そもそもこの「柔軟性」は何なのでしょうか。単に筋肉の柔らかさを指しているのでしょうか。

「柔軟性」の最も一般的な定義は、関節における可動域(= Range of Motion)とされています。
すなわち、「柔軟性が高い」という場合は「関節可動域が広い」ということを示しているため、関節の動きが靭帯や腱といった結合組織にも関わりをもつ以上、単なる筋肉の柔らかさよりも広義なものになると言えます。

では、関節可動域はどの程度が適切なのでしょうか。

柔軟性の適正レベル

アブダクションをしている女性

股関節を例に見てみましょう。股関節の動きは屈曲・伸展、外転・内転、外旋・内旋があり、それぞれの可動域は一般的に下記のように言われています。

屈曲:125° (膝関節伸展位では70~90°)
伸展:15°
外転:45°
内転:20°
外旋:45°
内旋:45°

スポーツにおいては実施競技によって必要とされる柔軟性が異なるため、一概には言えず、どの程度の柔軟性が適切なのかは、その本人によって全く異なります。
例えば、フィギュアスケートの選手の非常に高い柔軟性は、健康維持が目的の一般人にとっては全く不要であり、その逆も然りです。

ただ、健康維持が目的の一般人やマラソンランナーよりも短距離選手やサッカー選手といった球技の選手の方が、それよりもバレリーナやフィギュアスケート、体操選手の方が高度な柔軟性が求められるというのは少なくとも言えるでしょう。

柔軟性が低いことによるリスクとは

膝が痛む女性

このように柔軟性を求められるスポーツですが、柔軟性が低いとどのようなことが起こりうるのでしょうか。

低い柔軟性により高まるリスクとしては、肉離れといった筋肉のケガ、腰痛・肩こりといった姿勢不良があります。

例えば、オスグッド病やジャンパー膝といったスポーツ障害は大腿四頭筋のオーバーユースと柔軟性低下が主な原因と言われています。
こうしたスポーツ障害を発生させないためにも柔軟性は向上させた方がいいわけですが、ごくまれに柔軟性が非常に高い人がいます。こうした人たちは高すぎるが故のリスクがあるので注意が必要です。

柔軟性は高ければ高いほどよいのか

柔軟性が低いことによるリスクを見ていくと、柔軟性はどうやら高いことにこしたことはなさそうですが、低い柔軟性と同様、高い柔軟性にはリスクはないのでしょうか。

実は「高い柔軟性+筋力不足」である場合、脱臼や捻挫といった関節のケガ、関節の不安定性をもたらすリスクが高まるため注意が必要です。特に、女性は男性よりも柔軟性が高い傾向にあるため、一層の注意が必要です。

高い柔軟性にはそれに見合った筋力が必要になるため、高い柔軟性が要求される競技のアスリートは、一見そうでないように見えてもそれ相応の筋力を持っているということになります。

筋トレが柔軟性に与える影響

バーベル

さて、これまで柔軟性に関することをご紹介してきました。

筋トレをする目的は「競技力向上のため」「健康維持のため」「若々しくいたいため」など、人によって違いますが、せっかく行っているトレーニングによって硬い身体になり、それによって「〇〇が痛い・・・」なんていう事態は避けたいものです。
そのためには「どういうことをすると筋トレにより柔軟性が低下するのか」を知るのが近道となります。

それは何かというと次のとおりです。


【高負荷で可動域の狭い筋トレは柔軟性を低下させ、たとえ正しい方法による筋トレであってもストレッチ不足であれば柔軟性は低下する】

 【NG】高負荷で可動域の狭い筋トレ ⇒【推奨】適切な重量で可動域全体を使った筋トレ

ダンベルベンチプレスをしている女性

適切に計画・実施された筋トレは、可動域全体を使って行うことにより柔軟性を向上させる効果があるのが分かっていますが、高負荷でかつ狭い可動域で実施する筋トレは柔軟性を低下させることも分かっています。
(Baechle, T.R.. and R.W. Earle, eds. 2000. Essentials of Strength Training and Conditioning, 2nd ed. Champaign, IL: Human Kinetics)

筋トレは「〇kgをx回拳上できた」というように成果が分かりやすく、以前は拳上できなかった重量を克服できた時には達成感があるため、重量優先になってしまいがちです。
しかし、これが「正しいフォームで行う」「可動域全体を使って行う」というトレーニングの基本を見落とすことにつながりやすいとも言えるでしょう。
トレーニングジムなど周囲に人がいる環境だと何かと見栄を張ってしまうのが人間の性なのかもしれませんが、見栄を張ったところでいいことはなく、正しい方法で行うことをお勧めします。

例えばこんな人を見たことはないでしょうか。上腕二頭筋を鍛えるためのアームカールにおいて、高重量をボトム(最下点)までしっかり下さず、拳上時には身体の反動を用いて行っている人を・・・。
こうした不適切な筋トレにより柔軟性の低下を感じている場合、それは過度な筋肥大や筋量の増加ではなく、不適切な筋トレを行っているが故の関節周囲筋群の不適切な発達により可動域が制限されているということを表しています。
柔軟性をキープするためにも、適切な重量で可動域全体を使うようにして行ってください。(もちろんエキセントリック局面を意識して!)

 【NG】トレーニング後のストレッチ不足 ⇒【推奨】トレーニング後の十分なストレッチ

腸腰筋ストレッチをする男性

正しい方法で行っていたとしても、トレーニング後のストレッチが不足すると柔軟性低下の要因となります。時間に制約がある中で行うトレーニングであれば、より多くの時間をトレーニングに割きたい気持ちはわかりますが、クールダウンのストレッチまでがトレーニングです。身体のため、自分のため、ストレッチの時間まで考慮してトレーニングを行うようにすることを強くおすすめします。

 【NG】好きな部位だけのトレーニング ⇒【推奨】主働筋と拮抗筋のバランスのとれたトレーニング

プリチャーカールをしている男性

好きなトレーニング、得意なトレーニングばかりやっている人も要注意です。筋肉には、曲げる筋肉があれば伸ばす筋肉があるように対になっています。一方ばかりを鍛えてしまうと、表裏のバランスが崩れてしまい、それによる動作制限や痛みが出てきてしまいます。一方の筋肉(=主働筋)を鍛えるならば、それの対になっている筋肉(=拮抗筋)も併せて鍛えるようにしてください。

よくあるパターンとしては、
①腹筋を鍛えるためにクランチばかりしてしまい腰が痛い
②ベンチプレスばかりしているため腕を上げると肩が痛い

①はクランチのし過ぎにより、骨盤の後傾や腰椎の屈曲をもたらしていることが考えられるため、拮抗筋である脊柱起立筋群を鍛えることによりバランスを取っていく必要があります。

②は肩甲骨が前方変位している可能性があるため、僧帽筋下部にも焦点を当てたローイング系種目やベントオーバーサイドレイズを肩甲骨から行うようにするのがオススメですが、これまでのベンチプレスにより肩関節屈曲(水平内転)筋群が強すぎる場合、ベンチプレス系種目を控えめにするのが改善への近道です。

【まとめ】筋トレで柔軟性を低下させない方法とは

これまで記載してきたことをまとめると下記のようになります。

①高負荷でかつ狭い可動域の筋トレはせず、適切な重量で可動域全体を使って実施する。
②主働筋だけ鍛えるのではなく、拮抗筋とセットで行う。
③トレーニング後は十分にストレッチを行う。

特別なことは必要ではなく、今から簡単に取り組むことができます。筋トレによって柔軟性低下を感じている人はぜひ実践してみてください。

【おまけ】その他の柔軟性に影響を及ぼす要因

・関節弛緩性
生まれつき関節が緩い傾向にある人。弛緩性・不安定性を持つ人は過度なストレッチをすると悪化してしまうため、安定筋を高めるトレーニングをするのがおすすめ。


・年齢
「昔はあんなに体が柔らかかったのに」と思う人もいるのではないでしょうか?
実際に大人より子どもの方が柔軟性は高く、加齢により柔軟性は下がっていきます。著しく低下するのが身長が大きく伸びる時期です。これは骨の成長に他の組織が追い付かないため、その結果柔軟性が下がってしまうのです。したがって、この時期にハードな運動をするとスポーツ障害になりやすく、代表的なものが脛骨粗面に圧痛や収縮時痛が起きるオスグッド病です。
*オスグッド病は大腿四頭筋のオーバーユースと柔軟性低下が主な原因のため、幼年期からストレッチすることが理想的(競技によっては必須)であるといえます。

・性別
関節窩が浅い、靭帯が緩い傾向にあるという関節構造の解剖学的差異により、女性の方が男性よりも柔軟性が高い。
したがって、関節弛緩性がある女性は特に注意が必要である。

・温度
深部体温や外部温度が高い方が柔軟性は高くなる。こうした効果はウォームアップの重要性を示していると考えられる。

・活動レベル
身体的に活動的である人とそうでない人を比較すると、活動的である人の方が柔軟性が高い傾向にあることが分かっています。非活動的な人の柔軟性が低下する要因は、可動域が限定的であるが故の結合組織(筋線維、腱、靭帯)の硬化であることが多いです。このため、日頃から可動域大きく動かすことが推奨されます。
また、体脂肪の増加も関節の可動性を妨げるため注意が必要です。

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